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【超優しい!】脂肪酸がβ酸化されたときのATP生成量の収支について解説してみた!

あじ
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こんにちは!元高校球児の管理栄養士あじです。 スポーツ選手の食事や栄養学について『わかりやすく!』をモットーに情報発信しています!
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こんにちは!

私は平成生まれの管理栄養士です!

今回の記事は、脂質が完全に酸化された時にどのくらいのATPが生成されるのかそのATP量を数えていきたいと思います!

脂質は糖質と比べても非常に多くのエネルギーを生み出します。

その理由がこの記事でなんとなく理解できると思います。

それでは早速見ていきましょう!

脂質は脂肪酸のβ酸化によってエネルギーを得ている?

私たちが脂質からエネルギーを得る時、そのエネルギー源となるのは主に中性脂肪の構成要素である脂肪酸です。

中性脂肪は【トリアシルグリセロール】【トリグリセリド】とも言われています。

食物中の脂質のほとんどはこの中性脂肪という形で存在しています。

また、食べ過ぎた時に身体についてしまういわゆる【脂肪】もこの中性脂肪なのです。

そしてこの中性脂肪を構成しているのが脂肪酸です。

中性脂肪の構造をご覧ください!

このように中性脂肪はグリセロールと3つの脂肪酸で構成されています。

こうして中性脂肪を分解して得られる脂肪酸を私たちはエネルギー源として利用しているのです。

グリセロールも少しエネルギーとして利用されますが、脂肪酸に比べたら微々たる量のエネルギーです。

つまり、脂質から得られるエネルギーは中性脂肪を分解して得られた脂肪酸からほとんど生み出されているということです!

脂質からエネルギーを生み出す時、私たちは2つの脂肪酸の供給源があります。

  1. 食物中の中性脂肪を分解して得られた脂肪酸
  2. 体内に蓄えられている脂肪を分解して得られた脂肪酸

 

①は食べ物からエネルギーを得る場合です。

②は食間やダイエット中、飢餓状態などエネルギー源を食物中から得られない時の場合です。

今説明したことのイメージ図がこちらです!

今回の記事では、このように脂質(脂肪酸)からエネルギーを生み出す際に得られるATP数を詳しく解説していきたいと思います!

エネルギーの蓄えであるATPについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください!

【超簡単】ATPの構造や働きをわかりやすく解説してみた!

脂肪酸を完全酸化してエネルギーを生み出す代謝経路

脂肪酸は酸化していく過程でエネルギーは生み出されていくのですが、この代謝経路は大きくわけて2段階あります。

  • 1段階目・・・β酸化
  • 2段階目・・・TCAサイクル

 

脂肪酸はこの2つの代謝経路を順番に進んでいくのですが、それぞれどのような代謝経路なのかを簡単に復習したいと思います!

以下の2つの記事を読めばそれぞれの代謝経路を深く理解できると思います。

β酸化

β酸化は各脂肪酸が出発物質となり代謝されていきます。

β酸化はミトコンドリア内で行われるため、まず脂肪酸をミトコンドリア内へ運ぶ作業が必要になるのです。

その時脂肪酸はアシルCoAという物質に変換されてミトコンドリア外膜を通過します。

さらに、カルニチンという物質によってミトコンドリア内膜も通過しやっとβ酸化が始まるのです。

脂肪酸がアシルCoAに変わり、カルニチンによってβ酸化が行われるミトコンドリア内に移動する際にまずATPが使われるのです。

β酸化の最初の反応はATP(エネルギー)を使った反応です。

こうしてミトコンドリア内に移動してきたアシルCoA(炭素数n個)がβ酸化されていきます。

β酸化が1回終わると、炭素数2個のアセチルCoA炭素数がn-2個のアシルCoAとなります。

このようにβ酸化によって炭素数が2個のアセチルCoAがたくさん作り出されます。

つまり脂肪酸はβ酸化を繰り返して、炭素が2つずつアセチルCoAとしてどんどん放出されていくのです。

このβ酸化の過程でエネルギーは生み出されていきます。

こうしてできたアシルCoAはTCAサイクルに入りさらに代謝されていきます!

TCAサイクルにてさらにエネルギーが生み出されていくのです!

TCAサイクル

TCAサイクはアセチルCoAを出発物質として代謝されていく代謝経路です。

このTCAサイクルは山の手線のように一周回る過程でエネルギーを生み出します。

なので代謝経路というよりは、代謝回路といった方がイメージしやすいかもしれません。

TCAサイクルは脂質(脂肪酸)以外にも、糖質やたんぱく質からもエネルギーを生み出します。

TCAサイクルは三大栄養素全ての共通の代謝回路となっているのです。

それぞれの栄養素はこのTCAサイクルをぐるぐる周りながら膨大なエネルギーを生成します。

なのでこのTCAサイクルという代謝回路は栄養学を知る上では非常に重要なのでしっかり理解してほしいと思います。

各種脂肪酸は、このβ酸化とTCAサイクルを経て完全酸化されていくのです。

脂肪酸の代謝の一連の流れを簡単に示した図がこちらです!

脂肪酸の種類によって得られるATP数が違う?

実は脂肪酸が完全酸化されたときに得られるATPの量は、その酸化される脂肪酸の種類によって異なります。

なぜかというと、脂肪酸がβ酸化を受ける際に炭素数によってβ酸化を受ける回数や生成されるアセチルCoAの量が異なるからです。

β酸化は1サイクル終わると炭素数2個のアセチルCoAが生み出されます。

こうして脂肪酸は2つずつ炭素を放出してアセチルCoAに変え、最終的に全てアセチルCoAになるまでβ酸化を行います。

ということは脂肪酸の炭素数が多ければ多いほど脂肪酸がβ酸化を受ける回数と、それに伴うアセチルCoAの生成量も多くなるのです。

実際に種類によってβ酸化を受ける回数とアセチルCoAの数を示してみたいと思います。

炭素数 脂肪酸名 β酸化回数 アセチルCoA生成数
10 カプリン酸 4 5
12 ラウリン酸 5 6
14 ミリスチン酸 6 7
16 パルミチン酸 7 8
18 ステアリン酸 8 9
20 アラキジン酸 9 10
22 ベヘニン酸 10 11
24 リグノセリン酸 11 12

このように各種脂肪酸は、炭素数が偶数個の場合は全て炭素数が2個のアセチルCoAになるまでβ酸化を受けるのです。

そして炭素数によってTCAサイクルに進むアセチルCoAの量も変わっていくということです!

ATP量の収支を計算する上で大切なポイント

それでは本題に入っていきたいと思います。

今回は炭素数が16個の飽和脂肪酸であるパルミチン酸を例にATPの量を計算していきたいと思います!

ATPの収支を計算するときに、①β酸化②TCAサイクルの2つに代謝過程を分けて考えると非常にわかりやすいです。

なので別々に解説していきたいと思います!

β酸化の代謝過程では以下のポイントが重要になります。

  1. 最初のATPの消費量
  2. 代謝過程で生成されるNADH₂⁺
  3. 代謝過程で生成されるFADH₂

 

一方でアセチルCoAによるTCAサイクルの代謝過程では以下のポイントが重要になります。

  • 代謝過程で生成されるNADH₂⁺
  • 代謝過程で生成されるFADH₂
  • 代謝過程で生成されるGTP

 

これら全ての合計が脂肪酸(今回はパルミチン酸)が完全酸化されたときに得られるATPの数となります。

それぞれ見ていきましょう!

β酸化の代謝過程におけるATPの収支

脂肪酸がβ酸化を1回受けたときに得られるATP量は5ATPです。

あとは何回β酸化を受けたかによってその回数をかければ簡単に合計数は出てきます。

しかし、どんな脂肪酸をβ酸化する場合でも最初に2つのATPが消費されます。

この最初のATP消費量分だけβ酸化で得られるATP量から引けば合計のATP量が出てきます。

最初のATPの消費量

この上の図のように、どんな脂肪酸も最初にATPが2つ消費されます。

なのでATPの収支はどんな脂肪酸であっても-2ATPがスタートとなるのです。

NADH₂⁺由来のATP量

上の図の場所でNADH₂⁺が生成されます。

このNADH₂⁺は電子伝達系にてATP(エネルギー)を生み出します。

NADH₂⁺=3ATPなのでβ酸化1回受けるとここで3ATP得られるのです。

FADH₂由来のATP量

上の図の場所でFADH₂が生成されます。

このFADH₂は電子伝達系にてATP(エネルギー)を生み出します。

FADH₂=2ATPなのでβ酸化1回受けるとここで2ATP得られるのです。

つまりβ酸化を1回受けるたびにNADH₂⁺とFADH₂が生成されるので合計5ATPが得られるということです。

例のパルミチン酸の場合、β酸化は7回受けるので5ATP×7回=35ATPとなります。

そこに最初のATP消費量分が-2ATPあるので35ATP-2ATP=33ATPとなります。

TCAサイクルの代謝過程におけるATPの収支

β酸化によって生まれたアセチルCoAがTCAサイクルを1周したときに得られるATP量は12ATPです。

あとは何回TCAサイクルを周ったか(アセチルCoAが何個できたか)によってその回数をかければ簡単に合計数は出てきます。

NADH₂⁺由来のATP量

上の図の場所でNADH₂⁺が生成されます。

このNADH₂⁺は電子伝達系にてATP(エネルギー)を生み出します。

NADH₂⁺=3ATPなのでTCAサイクルを1周する際に3ATP×3箇所=9ATP得られるのです。

FADH₂由来のATP量

上の図の場所でFADH₂が生成されます。

このFADH₂は電子伝達系にてATP(エネルギー)を生み出します。

FADH₂=2ATPなのでTCAサイクルを1周する際に2ATP×1箇所=2ATP得られるのです。

GTP由来のATP量

上の図の場所でGTPが生成されます。

このGTPはATP(エネルギー)に変換されます。

GTP=1ATPなのでTCAサイクルを1周する際にGTP=1ATP得られるのです。

以上の3つを合計するとTCAサイクルを一周するたびに(β酸化で生成されるアセチルCoA1つにつき)

  • NADH₂⁺・・・3ATP×3箇所=9ATP
  • FADH₂・・・2ATP×1箇所=2ATP
  • GTP・・・1ATP×1箇所=1ATP

 

合計12ATPが得られるということです。

例のパルミチン酸の場合はβ酸化を受けた際に8つのアセチルCoAが生成されるので12ATP×8周=96ATPとなります。

パルミチン酸が完全酸化されたときに得られるATP数を計算した時、β酸化とTCAサイクル両方を合計すると129ATP(33ATP(β酸化分)+ 96ATP(TCAサイクル分))となります。

パルミチン酸で得られるATP数をわかりやすいまとめた表がこちらになります!

各種脂肪酸から得られるATP数をまとめてみた!

先ほどは、炭素数16個の飽和脂肪酸であるパルミチン酸を例にATP量の収支を計算してみました!

パルミチン酸以外の脂肪酸でもATP数を計算し表にまとめてみたのでご覧ください!

炭素数 脂肪酸名 β酸化時の
ATP消費量
β酸化回数
×
ATP数
アセチルCoA数
×
ATP数
ATP合計数
10 カプリン酸 -2 4×5 5×12 78
12 ラウリン酸 -2 5×5 6×12 95
14 ミリスチン酸 -2 6×5 7×12 112
16 パルミチン酸 -2 7×5 8×12 129
18 ステアリン酸 -2 8×5 9×12 146
20 アラキジン酸 -2 9×5 10×12 163
22 ベヘニン酸 -2 10×5 11×12 180
24 リグノセリン酸 -2 11×5 12×12 197

糖質の代表であるグルコース1分子の完全酸化時のATP数が臓器によって36ATPまたは38ATPとなっています。

グルコースから得られるATP数について詳しく解説した記事がこちらです。

グルコースが完全酸化される際のATP生成量の収支について解説してみた!

グルコースが完全酸化した際に生成されるATP数と比較すると、脂質(脂肪酸)が完全酸化されたときに得られるATP数がいかに多いかがわかると思います。

まとめ

今回は脂肪酸が完全酸化されたときに得られるATP数について解説してきました!

最後に重要なポイントをまとめたいと思います。

 

脂肪酸がATP数を生み出す代謝と概要

 

β酸化によって得られるATPの収支

  • 最初に消費するATP量・・・-2ATP
  • β酸化を一周する際に得られるATP量・・・5ATP
    (NADH₂⁺=3ATP FADH₂=2ATP)

 

TCAサイクルによって得られるATPの収支

  • TCAサイクルを一周する際に得られるATP量・・・12ATP
    (3NADH₂⁺=9ATP FADH₂=2ATP GTP=1ATP)

 

炭素数16個のパルミチン酸が完全酸化されたときに得られるATP量の詳細

 

その他の脂肪酸の完全酸化によって得られるATP量のまとめ

炭素数 脂肪酸名 β酸化時の
ATP消費量
β酸化回数
×
ATP数
アセチルCoA数
×
ATP数
ATP合計数
10 カプリン酸 -2 4×5 5×12 78
12 ラウリン酸 -2 5×5 6×12 95
14 ミリスチン酸 -2 6×5 7×12 112
16 パルミチン酸 -2 7×5 8×12 129
18 ステアリン酸 -2 8×5 9×12 146
20 アラキジン酸 -2 9×5 10×12 163
22 ベヘニン酸 -2 10×5 11×12 180
24 リグノセリン酸 -2 11×5 12×12 197

 

以上です!

それでは次回の記事も楽しみにしていてくださいね!

 

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