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グルコースが完全酸化される際のATP生成量の収支について解説してみた!

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こんにちは!元高校球児の管理栄養士あじです。 スポーツ選手の食事や栄養学について『わかりやすく!』をモットーに情報発信しています!
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こんにちは!

私は平成生まれの管理栄養士です!

ここ最近はずっと糖質代謝について解説していますが、今回も残念ながら糖質代謝についてです・・・( ;∀;)

今回は糖質代謝⑤ということで、その内容は次の通りです!

『グルコースが完全酸化する経路とその時に生じるATP量』

グルコースが最後までどのように酸化していくか、さらにどのくらいATPを生成していくか?

このような内容に関して詳しく見ていきたいと思います。

それでは早速見ていきましょう!

グルコースが完全酸化される代謝経路を復習しよう!

グルコースは、グルコースとして食物から体内に取り込まれるか、その他の少糖類や多糖類として取り込まれ分解されて生成されます。

こうして吸収されたグルコースは血液に乗り各細胞に運ばれて代謝されていくのです。

グルコースは酵素の存在下で完全に酸化されます。

グルコースが完全に酸化されると、最終的には二酸化炭素(CO₂)と水(H₂O)になります。

グルコースがもつ化学的エネルギーはその代謝過程において徐々にATPの高エネルギーリン酸結合として蓄えられていくのです。

ATPについてまだ詳しく知らない人や、ATPというものを初めて聞いた人はこちらの記事をご覧ください!

【超簡単】ATPの構造や働きをわかりやすく解説してみた!

こうしてグルコースは二酸化炭素と水に完全に酸化される過程でATPを生み出し、そのATPに蓄えられたエネルギーによって体内で行われる様々な生命活動に利用されるのです。

ここで超簡単なグルコースの代謝とその役割のイメージ図を作ってみました。

グルコースが完全酸化する経路

グルコースが完全に酸化されて二酸化炭素と水になる過程でATPが生まれ、それが様々な活動に利用されるということはなんとなく理解できたと思います!

それでは、そのグルコースはどのような代謝経路で完全に酸化されていくのでしょうか?

このブログを毎日ご覧になってくださっている方はもうご存知かもしれません!

グルコースはまず解糖系という代謝経路でピルビン酸に変化します。

グルコース1分子から2分子のピルビン酸がこの解糖系によって生成されるのです。

そしてこの解糖系という代謝は細胞質という場所で行われています。

こうしてできたピルビン酸は細胞質からミトコンドリアに場所を変えて次の代謝経路によって代謝されていきます。

その解糖系に次に進む代謝経路がTCAサイクルです。

TCAサイクルはアセチルCoAがスタートの基質であり、ぐるっと一周回ってくるような回路となっています。

TCAサイクルを回りながら、エネルギー源であるNADH+H⁺やFADH₂を産生したり、二酸化炭素や水が抜けたりと完全に酸化されていくのです。

ここで大事なことは、解糖系という代謝は細胞質で営まれ、TCAサイクルという代謝はミトコンドリア内で営まれるということです。

それぞれの代謝に関して、詳しく解説してありますのでそれぞれの記事を是非ご覧ください!

最後にグルコースが完全酸化されるときの簡単なイメージ図を載せておきます!

還元当量によるATP数

グルコースが完全に酸化される過程で得られるATP量をこれから解説していくのですが、その前に覚えてほしいことがあるのでそれだけ簡単に説明したいと思います。

解糖系やTCAサイクルで代謝されていく過程で、NADHやFADH₂といったものが生成されます。

このNADHはADPのように直接ATPに変わることはありませんが、ミトコンドリア内の電子伝達系というシステムによってATPを生み出すことができるのです。

  • NADH=3ATP分
  • FADH₂=2ATP分

 

このようになるのです。

これをまず頭にいれておくと、この先だいぶ楽にATPの生成量を理解できると思います。

それでは具体的に見ていきましょう!

グルコースの完全酸化した際のATP数の収支

何度も繰り返しになってしまいますが、解糖系によってグルコースからピルビン酸が生じます。

解糖系で生成されたピルビン酸は、TCAサイクルに進みます。

また、TCAサイクルで生じたNADHやFADH₂は電子伝達系というエネルギーを作り出すシステムによって酸化されます。

なので、グルコースが完全酸化される際に生じるATPも

  • 解糖系におけるATP生成
  • TCAサイクルにおけるATP生成

 

この2つがあるということです。

2つを別々に見ていった方がわかりやすいと思うので、まずは解糖系におけるATP生成量から見ていきましょう!

解糖系におけるATP生成量の収支

まずは、解糖系によるATP量の収支を見ていきましょう!

言葉で説明するよりも、図で見て方がわかりやすいと思うのでこちらをご覧ください!

グルコースからピルビン酸ができるまでに、まず基質としてATPを消費していることが分かります。

2箇所でATPの基質を使っていますね!

グルコースの完全酸化におけるATPの生成は実はマイナススタートなのです。

エネルギーを使って酸化し始め、その後に大量のエネルギーを回収するというスタンスです。

なんだか投資に似ていますね!

解糖系おいてATPが消費されている反応は次の2つの反応です。

  1. グルコース → グルコース-6-リン酸
  2. フルクトース-6-リン酸 → フルクトース-1.6-二リン酸

 

それぞれの反応を見ていくと、

グルコース→グルコース-6-リン酸の反応時では

フルクトース-6-リン酸→フルクトース-1.6-二リン酸の反応時では

このようにどちらも、ATPのリン酸基を一つ反応前の基質にあげることで、基質にリン酸が増えいるのが分かります。

ここでATP生成量の収支は-2です!

続いて、ATPが基質として作られている反応が上の図を見てもわかるように2箇所あります。

  1. 1.3二ホスホグリセリン酸 → 3-ホスホグリセリン酸 の反応時
  2. ホスホエノールピルビン酸 → ピルビン酸 の反応時

 

この2箇所の反応時です。

詳しく見ていくと

1.3二ホスホグリセリン酸→3-ホスホグリセリン酸 の反応時では、

ホスホエノールピルビン酸→ピルビン酸 の反応時では、

このように、どちらもADPからATPの基質を作っています。

ここで大切なことは、解糖系においてグルコース1分子はピルビン酸が2分子になるということです。

解糖系においてフルクトース-1.6-二リン酸から、ジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒド-3-リン酸を生成する反応で2つに分解されているところは非常に大事なポイントです。

その後の反応で、ジヒドロキシアセトンリン酸がグリセルアルデヒド-3-リン酸に変化するので、1分子のグルコースから2分子のグリセルアルデヒド-3-リン酸ができます!

この反応によってグリセルアルデヒド-3-リン酸以降は2分子分の代謝過程になっているということです。

ということは、ATPの生成も先ほど説明した2箇所の反応が2分子分で起きているので、2ATP×2で4ATPできているのです。

つまり、解糖系における基質としてのATPの生成量は4となるのです。

実は、ATPは直接ADPから基質としてできるだけでなく、NADH+H⁺からも生成されます。

上の図でいうと、グリセルアルデヒド-3-リン酸から1.3-二ホスホグリセリン酸の反応時で生まれるNADH+H⁺です。

ここで生じたNADHはミトコンドリア内に直接入ることが不可能なので独自の輸送システムがあります。

その輸送システムは臓器によって異なるので、どこの臓器で解糖系が行われてるかによって変わってくるのです。

輸送システム① グリセロール・リン酸シャトル

骨格筋や脳では、グリセロール・リン酸シャトルという輸送システムによって解糖系によって生じたNADHをミトコンドリア内に運んでATPを産生するのです。

このグリセロール・リン酸シャトルではNADHはミトコンドリア内でFADH₂を生じます。

FADH₂は2ATPでしたね!

なので筋肉や脳なので行われている解糖系で生じるNADHはFADH₂となるため、2ATP分となるわけです。

しかし、グリセルアルデヒド-3-リン酸以降の反応は2分子分の反応なので、2ATP×2で4ATPとなります。

輸送システム② リンゴ酸・アスパラギン酸シャトル

一方で肝臓や腎臓、心筋などで行われている解糖系では、グリロール・リン酸シャトルではなく、リンゴ酸・アスパラギン酸シャトルという別の輸送システムが存在します。

このリン酸・アスパラギン酸シャトルでは、解糖系で生じるNADHはそのままミトコンドリア内においてもNADHとしてATPを生成します。

NADHは3ATP分でしたね!

なので肝臓や腎臓、心筋行われている解糖系で生じるNADHは3ATP分となるわけです。

しかし、グリセルアルデヒド-3-リン酸以降はの反応は2分子分の反応なので、3ATP×2で6ATPとなります。

以上が解糖系におけるATP量の収支です。

少し難しかったと思われますのです、ここでわかりやすくまとめてみたいと思います!

上の図の基質レベルのリン酸化とは、基質としてADPからATPを生成することを言います。

リン酸をADPにくっつけることでATPを生成することから、基質レベルのリン酸化と言われています。

TCAサイクルにおけるATP生成量の収支

解糖系におけるATPを生成量に関しては先ほど説明しました。

ここからはTCAサイクルにおけるATPの生成量を解説していきます。

まずこちらをご覧ください!

TCAサイクルはアセチルCoAからぐるっと一周する代謝回路のことです。

従って、印のついている場所はまだTCAサイクル内ではありませんが、ピルビン酸からアセチルCoAになるこの反応でもNADH+H⁺が生成されます。

NADHは3ATP分でしたね!

しかし繰り返しになりますが、解糖系におけるグリセルアルデヒド-3-リン酸以降の反応は2分子分の反応なので、3ATP×2で6ATPです。

このピルビン酸からアセチルCoAに変化する反応でATPは6つ生成されます。

次に上の図を見てみると、TCAサイクル内でNADH+H⁺が生じる反応が3箇所存在します。

  1. イソクエン酸→αケトグルタル酸
  2. αケトグルタル酸→スクシニルCoA
  3. リンゴ酸→オキサロ酢酸

 

以上の3つです。

イソクエン酸→αケトグルタル酸の反応時では

αケトグルタル酸→スクシニルCoAの反応時では

リンゴ酸→オキサロ酢酸の反応時では

このように3箇所でNADHは生じていますので、3ATP×3箇所で9ATPとなります。

解糖系におけるグリセルアルデヒド-3-リン酸以降の反応は2分子分の反応なので、9ATP×2で18ATPとなります。

次に見てほしいのが上の印の部分です。

ここのコハク酸→フマル酸の反応時においてFADH₂が生じています。

FADH₂は2ATP分でしたね!

解糖系におけるグリセルアルデヒド-3-リン酸以降の反応は2分子分の反応なので、2ATP×2で4ATPとなります。

最後に上の図の印の部分ですが、ここではGTPができることでATPが直接基質として生成されています。

つまりスクシニルCoA→コハク酸の反応時に質レベルのリン酸化としてATPが生成されるのです。

解糖系におけるグリセルアルデヒド-3-リン酸以降の反応は2分子分の反応なので、ATP×2で2ATPとなります。

これで全てのATP生成箇所を解説しました。

TCAサイクルでのATP生成ポイントをまとめてみたいと思います!

あとは、解糖系におけるATP生成と、今解説してきたTCAサイクルにおけるATP生成を合計すればよいわけです。

グルコースが完全酸化される際に生じる全体のATP生成量の収支について見ていきましょう!

さらにわかりやすいように、臓器別にその収支をまとめてみると以下のようになります。

代謝経路 内容 ATP生成量の収支
骨格筋
肝臓
腎臓
心筋
解糖系 基質としてのATPの消費 -2 -2
基質レベルのリン酸化 4 4
NADHのシャトルシステムによる
還元当量の移動
4 6
TCAサイクル ピルビン酸→アセチルCoA 6 6
酸化的リン酸化(NADH) 18 18
酸化的リン酸化(FADH₂) 4 4
GTPによるATP生成 2 2
合計 36 38

おまけ

実は最近では、このATPの合成時における還元当量の計算が違った見解で計算されている場合があります。

ここでは詳しく触れませんが、以下の通りです。

  • NADH=2.5ATP
  • FADH₂=1.5ATP

 

一番最初にNADHは3ATP、FADH₂は2ATPと説明しましたが、このような値で計算する方法もあるようです。

この値で計算してみると、以下のようになります。

それぞれの臓器別にATPの収支をまとめてみると以下のようになります。

代謝経路 内容 ATP生成量の収支
骨格筋
肝臓
腎臓
心筋
解糖系 基質としてのATPの消費 -2 -2
基質レベルのリン酸化 4 4
NADHのシャトルシステムによる
還元当量の移動
3 5
TCAサイクル ピルビン酸→アセチルCoA 5 5
酸化的リン酸化(NADH) 15 15
酸化的リン酸化(FADH₂) 3 3
GTPによるATP生成 2 2
合計 30 32

なので先ほど解説したように、ATPが36や38で表せられる場合と、この計算方法によってATPが30や32で表される場合があるのです。

また、違う理論によってはATP生成量はこれらとは別の値も出てきます!

実際にネットで色々と検索するとどちらの記載も存在していてお互いに諸説あるのが事実です。

栄養学を学ぶ上では、ATPが何個できるかというのはそこまで重要ではありません。

重要なのは、どのようなシステムでエネルギーが生み出されているのかを理解することです。

なので栄養学を学びにこの記事に飛んできた方はそこまで詳しくATPの生成量の収支に関して時間をかけて勉強する必要はありません。

なんとなくでよいので、

  1. ATPとはどのようなものか
  2. 解糖系TCAサイクルがどのようなものか
  3. 解糖系・TCAサイクルの過程で生じるATPの生成システム

 

などを覚えてほしいと思います!

まとめ

ここまでグルコースが完全酸化される際に生じるグルコース生成量の収支に関して解説してきました!

最後に重要なポイントをまとめたいと思います。

一般的に解説されているATP生成量の収支

上記の収支をわかりやすく表にでまとめると以下のようになります。

代謝経路 内容 ATP生成量の収支
骨格筋
肝臓
腎臓
心筋
解糖系 基質としてのATPの消費 -2 -2
基質レベルのリン酸化 4 4
NADHのシャトルシステムによる
還元当量の移動
4 6
TCAサイクル ピルビン酸→アセチルCoA 6 6
酸化的リン酸化(NADH) 18 18
酸化的リン酸化(FADH₂) 4 4
GTPによるATP生成 2 2
合計 36 38

 

最近解説されている計算方法によってのATP生成量の収支

上記の収支をわかりやすく表にでまとめると以下のようになります。

代謝経路 内容 ATP生成量の収支
骨格筋
肝臓
腎臓
心筋
解糖系 基質としてのATPの消費 -2 -2
基質レベルのリン酸化 4 4
NADHのシャトルシステムによる
還元当量の移動
3 5
TCAサイクル ピルビン酸→アセチルCoA 5 5
酸化的リン酸化(NADH) 15 15
酸化的リン酸化(FADH₂) 3 3
GTPによるATP生成 2 2
合計 30 32

 

以上です!

それでは次回の記事もお楽しみに!

 

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